クセの強い仙人
遥か昔の噺でおました。
そりゃあ、江戸の世まで遡ることでございましょ。
山年 戴辯陸賭(やまとし しょうだん)
ちゅう名の、ちっこいお子がおらっしゃいました。
その子がな、もう泣いて泣いて、
えらい我儘やったそうでございます。
そこで父御と母御は、森の噂の仙人さんに
修行をしてもらうことにいたしましたんや。
実際に会うて見ると、少々案じられるほどでおましたが、まあ、試してみんと分かりまへんさかいなァ。
母御は仙人さんに我が子を預け、こない言いはりました。
「この子は行儀がのうていけまへんさかい、
ビシバシと鍛え上げておくれやす。
修行が仕上がりましたら、己の足で険しき山を下り、
家へ戻れと言い聞かせてくだされ。
我が住まいは、城郭の改修、三の四でござんす。」
今度は、父御(ててご)がこない言い出さはりました。
修行の中身は何でおましても構いまへんさかい。
まあ、なにはともあれ、行く末天罰に当たるようなことの無い、行儀のええお子に仕込んでくだされ。
そこから、死んでしもてもええちゅうほどの、えらい辛い修行が始まったのでおました。
修行一 血の池つなわたり
最初の修行はな、一寸よりもちっこい幅の縄を
綱渡りするのじゃ。
下を見れば血の池地獄、上を見れば天針地獄。
ここを三十秒の間に渡りきれたら、まずは合格じゃて。
すると戴辯陸賭ちゃんからは涙が止まらんで止まらんで、
ぎゃあぎゃあ泣いておられましたら、
仙人さんがこないおっしゃいました。
「そんなにべそをかくと、閻魔さまに
おへそから皮を剥ぎ取られるぞ。
べそをかく前に、さっさと渡ってみつかったの。」
わあ、戴辯陸賭ちゃん、
あの恐ろしい血の池と天針の間を
無事に渡りきらはりましたか!大した根性でおますなァ!
仙人さんは無事に縄を渡りきった戴辯陸賭ちゃんを睨みつけ、こない言いました。
「ふん、まぐれで渡りきったな。
お次は『修行二』じゃ。
あのチクチクと尖った針の山の上を裸足で歩き、
鬼たちの食卓へ一膳ずつお箸を正しく配って歩くのじゃ。
もしもお行儀悪う雑に配ったら、最初からやり直しじゃて。 さあ、さっさと歩きなされ。」
戴辯陸賭ちゃんは足の裏をチクチクと刺されながらも、
涙を堪えて一膳一膳、それはそれは丁寧にお箸を配り、
この修行二も見事にやり遂げたのでおました。
すると仙人さんは、
またしても意地の悪い顔をしてこない言いはりました。
「ふうむ、なかなかやるわい。
本じゃが『修行三』はそうはいかぬぞ。
今度はあのチンチンに熱された、巨大な鉄の算盤
の上へ乗るのじゃ。
その上で三十分の間、きれいに正座をして
『毎度おおきに』と美しくお辞儀をし続けなされ。
もし姿勢が崩れたら、
熱い算盤の珠がパチリと弾けてお尻を直撃するさかいな。
覚悟しなされ。」
戴辯陸賭ちゃんはお尻を真っ赤にしながらも、
必死で背筋を伸ばし、大きな声で「毎度おおきに!」
と頭を下げ続け、この修行三をも辛うじて耐え抜いたのでおました。
これには仙人さんも流石に目を見張り、
最後となる『修行四』を告げはりました。
「ようぞ耐えおったな。本じゃが、これが最後の仕上げ
『修行四』じゃ。
目の前にある山盛りのご馳走を、己の背丈よりも長いお箸を使って、お行儀よう平らげてみせよ。ただし、長いお箸じゃで自分の口には届かぬぞ。向こう側に座るお腹をすかせた小鬼に『どうぞ』と先に食べさせてやるのじゃ。欲を捨て、相手を思いやる行儀の良さが無ければ、この飯は一生喰えぬさかさせた」
修行四は違うところで
遥か昔の噺でおました。
そりゃあ、江戸の世まで遡ることでございましょ。
山年 戴辯陸賭(やまとし しょうだん)
ちゅう名の、ちっこいお子がおらっしゃいました。
その子がな、もう泣いて泣いて、
えらい我儘やったそうでございます。
そこで父御と母御は、森の噂の仙人さんに
修行をしてもらうことにいたしましたんや。
実際に会うて見ると、少々案じられるほどでおましたが、まあ、試してみんと分かりまへんさかいなァ。
母御は仙人さんに我が子を預け、こない言いはりました。
「この子は行儀がのうていけまへんさかい、
ビシバシと鍛え上げておくれやす。
修行が仕上がりましたら、己の足で険しき山を下り、
家へ戻れと言い聞かせてくだされ。
我が住まいは、城郭の改修、三の四でござんす。」
今度は、父御(ててご)がこない言い出さはりました。
修行の中身は何でおましても構いまへんさかい。
まあ、なにはともあれ、行く末天罰に当たるようなことの無い、行儀のええお子に仕込んでくだされ。
そこから、死んでしもてもええちゅうほどの、えらい辛い修行が始まったのでおました。
修行一 血の池つなわたり
最初の修行はな、一寸よりもちっこい幅の縄を
綱渡りするのじゃ。
下を見れば血の池地獄、上を見れば天針地獄。
ここを三十秒の間に渡りきれたら、まずは合格じゃて。
すると戴辯陸賭ちゃんからは涙が止まらんで止まらんで、
ぎゃあぎゃあ泣いておられましたら、
仙人さんがこないおっしゃいました。
「そんなにべそをかくと、閻魔さまに
おへそから皮を剥ぎ取られるぞ。
べそをかく前に、さっさと渡ってみつかったの。」
わあ、戴辯陸賭ちゃん、
あの恐ろしい血の池と天針の間を
無事に渡りきらはりましたか!大した根性でおますなァ!
仙人さんは無事に縄を渡りきった戴辯陸賭ちゃんを睨みつけ、こない言いました。
「ふん、まぐれで渡りきったな。
お次は『修行二』じゃ。
あのチクチクと尖った針の山の上を裸足で歩き、
鬼たちの食卓へ一膳ずつお箸を正しく配って歩くのじゃ。
もしもお行儀悪う雑に配ったら、最初からやり直しじゃて。 さあ、さっさと歩きなされ。」
戴辯陸賭ちゃんは足の裏をチクチクと刺されながらも、
涙を堪えて一膳一膳、それはそれは丁寧にお箸を配り、
この修行二も見事にやり遂げたのでおました。
すると仙人さんは、
またしても意地の悪い顔をしてこない言いはりました。
「ふうむ、なかなかやるわい。
本じゃが『修行三』はそうはいかぬぞ。
今度はあのチンチンに熱された、巨大な鉄の算盤
の上へ乗るのじゃ。
その上で三十分の間、きれいに正座をして
『毎度おおきに』と美しくお辞儀をし続けなされ。
もし姿勢が崩れたら、
熱い算盤の珠がパチリと弾けてお尻を直撃するさかいな。
覚悟しなされ。」
戴辯陸賭ちゃんはお尻を真っ赤にしながらも、
必死で背筋を伸ばし、大きな声で「毎度おおきに!」
と頭を下げ続け、この修行三をも辛うじて耐え抜いたのでおました。
これには仙人さんも流石に目を見張り、
最後となる『修行四』を告げはりました。
「ようぞ耐えおったな。本じゃが、これが最後の仕上げ
『修行四』じゃ。
目の前にある山盛りのご馳走を、己の背丈よりも長いお箸を使って、お行儀よう平らげてみせよ。ただし、長いお箸じゃで自分の口には届かぬぞ。向こう側に座るお腹をすかせた小鬼に『どうぞ』と先に食べさせてやるのじゃ。欲を捨て、相手を思いやる行儀の良さが無ければ、この飯は一生喰えぬさかさせた」
修行四は違うところで