2011年11月16日

小袖に描かれた三十石船

京都文化博物館で開催中の『京の小袖―デザインにみる日本のエレガンス』展に、丸紅コレクションの名品「曳舟文様小袖」の出展が予定されています(後期:十一月二十二日より)。


「納戸紋縮緬地淀の曳船文様染繍小袖」
十八世紀の第4四半期、天明・寛政ころの製と考えられる小袖である。小袖の文様配置は十八世紀中ごろから、広巾の帯が普及し、結びの位置も次第に背後に統一されるようになった結果、腰からすそに重点が置かれるようになった。また、結髪が漸次大形化し、くし、笄(こうがい)などの使用が著しくなった結果、小袖の身丈を長く仕立て、すそ引きに着る着付けが一般化したことによって、すそ文様が普及した。すそ文様によって背後はバランスのとれたものとなったが、今度は前の方に文様がなく寂しくなった結果、すその文様を前見ごろから立づまの方へ持ち上げた文様構成、江戸づまが考案された。つま文様が最も流行したのは一七七〇年代から八〇年代末にかけてであるが、つま文様は現在まで一様式として継承されている。本品は典型的な江戸づま文様である。船を引いて川をさかのぼる景を文様としたもので、色挿しはほとんどなく、のり防染による白あげと墨による描き上げ、金糸の刺しゅうのみによる極めてしょうしゃな逸品である。江戸の浮き世絵師勝川春章の下絵と伝えられている(丸紅コレクションより)。

ここに描かれた情景は、なんと、まさかの「三十石船」。綱で曵いていることから「上り」の船でしょう。上り船は棹をさして上る所もありましたが、十一里余(約45キロ)のほとんどを綱で曳いて上ったと思われます。曳き場所は九カ所あって、大変な労働と時間をかけて、伏見まで上ったのです。画像が小さくてわかりにくいのですが、上方に散らばる点々は水鳥です。大きな画像(左)で見ると、カンムリカイツブリのようです。秋に飛来する渡り鳥で、春には立派な冠をいただいて北に帰ります。とすると、季節は早春でしょうか。現在では桂川流域で多く見られることから、水無瀬あたりかもしれませんが、残念ながら、場所は特定できません(津川)。

「曳舟文様小袖」(部分)。丸紅株式会社沿革図より

【追記】
読者の方から、描かれた水鳥は「アオサギ」か「ゴイサギ」ではないか、とのご指摘を受けました。改めて図鑑等を調べたところ、冠羽が長いことや首の長さなどから、どうやら「アオサギ」らしいと判断しました。さらにご教示いただければ幸いです。

投稿者 tategaki : 16:56| トラックバック (0)

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