2011年07月14日
記号論としての大阪の歴史『プリンセス・トヨトミ』を読む
ご無沙汰です!
最近「プリンセス・トヨトミ」を電子書籍で読みました。大阪の歴史に少しでも興味があるものにとっては、面白いですね!○○さんは最近大阪のこういう歴史にも関連する活動をされているようなので、メッセージを送りたくなりました。ひょっとして、「大阪国」の幹部だったりして?
ちょっとレビュー的なものを書いてみました…。またいろいろ教えてください。(Masa Fukata)
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この著者の前作であるベストセラーは読んではいなかったが、電子書籍として出版されている本の中で面白そうなタイトルだったので選んでみた。
とにかく、面白い。テンポのいいストーリーテリングで語られるその物語には、記号論としての大阪の風物がふんだんに折り込まれている。その一つ一つが面白く懐かしい。ネタバレになるので挙げないが、大阪で生まれ育った人にとっては人生のいろいろな瞬間に語り継がれている不思議な小ネタばかり。
大阪人ではなく京阪神の周辺の都市で生まれ育ったボク(神戸人)のような者にとっては、これまでつきあいのあった大阪生まれの女の子達に何気なく教えてもらったことばかりである。
「そんなすごいこと、なんでメディアで取り上げられていないのに知ってるの?」
「大阪で生まれ育った女の子なら誰でも知ってるで」
ということが今までの人生で何度ともなく起こった。
そういう非常にユニークな文化圏である「大阪」には、これぐらいの「公然の秘密」があってもおかしくない。というより、これに限らず他にももっともっとありそうである。近ごろそういう大阪の秘密がごろごろボクの目に留まるようになってきた。
例えば「上町台地」は最近になって、なぜ「上」なのか?と言う問題がネット上で取り上げられていた。いわく、大阪の町は標高が高い東側が「上」とされ住民に認識されていたこと。上町台地の東端の難波宮が大阪では一番高い位置にあり、そこから「坂」で海に面していたこと。その坂が「大坂」の「坂」。その海辺の中心的な位置に建てられているのが四天王寺。中国・朝鮮からしきりに文化輸入を図った当時、ここが国際港湾都市であったことは想像に難くない。
古代から飛鳥・奈良時代の難波宮や四天王寺の時代に続き、次に来る大阪の大きなミステリーの山場はもちろん豊臣時代。この小説がそこからさらに現代につながるストーリーに仕立てているのは大阪の歴史を知るものにとって、大変ロマンを感じるところである。小説の中に触れられている大坂城の堀の配置や真田山についてもまだまだ怪しさは格別である。
個人的には、豊臣時代の次に来る大阪の次のミステリーの山場は、明治維新後第二次大戦までで、近代工業化社会の到来に合わせて様々なネタが転がっている。例えば、天六に作られた巨大なターミナルビルであり、近年残念なことに解体された京阪天六ビル。京阪が梅田に乗り入れる計画があったことを示唆する天満、桜ノ宮、京橋の駅付近の土地利用。旧京橋駅がもともと東にあったことを示す商店街の立地。さらに日本陸軍大阪砲兵工廠が置かれた大阪城周辺。立入禁止で現存する赤レンガの化学分析工場跡。なぜか1980年代まで開発されなかった大阪砲兵工廠跡地(現OBP)。この歴史については今でも多くが明らかにされていない。
というわけで、片っ端から大阪の怪しい歴史に触れているこの物語は、大阪と言う町のユニークさの原点としてこの秘密の存在を匂わせている点が大変興味深く、またこの物語に出てくる人名などの固有名詞、大阪の歴史文物などすべてが記号論的に何かを示唆しているなど、二重三重に楽しめる内容となっている。
近年の歴史ブームもあり、やっと出てきた大阪についての歴史エンターテイメント小説。特に京阪神で生まれ育ったか、または人生の一時期大阪で過ごしたことのある人には大変楽しめる物語と思う。
投稿者 tategaki : 10:33| トラックバック (0)
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